HOME > 事業内容 > 印刷機械 > テクノプラザ > バックナンバー > 座談会 DIAMOND 300を語る。 2

テクノプラザ 座談会 DIAMOND 300を語る。 2

目指したのは、“三菱らしくない”デザイン。

司会 次は、大きく変貌を遂げたデザインについてお伺いしたいのですが、設計に当たってはボルト1本の配置や留め方にまでこだわられたそうですね。

望月 これまでデザインに対しては正直あまり良い評価をいただいていませんでしたから。DIAMOND 300ではデザインのプロフェッショナルとして活躍なさっている方の力を借りて“三菱らしくないデザイン”を目指しました。

司会 それで内山さんに白羽の矢が立ったというわけですね。今回のデザインはどういうところにポイントを置いたのでしょうか?

内山 まず大前提として三菱さんから出たオーダーは「地球環境に優しい」ということ。省電力など資源の問題も含めて、ですね。それともうひとつは「人に優しい機械にしたい」ということでした。三菱というと、どうしても「重機械」の重々しいイメージがありますよね。それが今回は、設計の皆さんも口を揃えて「人に優しく」とか「ソフトに」とおっしゃっていたので「これは、やり甲斐のある仕事になりそうだ」という予感がしました。あとは、海外のデザイナーと手を組んでやって欲しいというリクエストもありました。

司会 海外のデザイナーを起用しようという発想はどこから出てきたのですか?

藤本 きっかけはdrupa2004でした。会場へ入って三菱の展示ブースを探して迷ってしまって…「このへんのはずなんだけど」と、周りをよく見たら、そこがウチのブースだったんです。これまでとはあまりにも印象が違っていたので気が付かなかったんですね。なぜかと思って聞いてみますとブースデザインを海外のデザイナーに任せたということで、印刷機械もグローバルな市場で戦っていくためには海外のデザインセンスをもっと取り入れていくべきだと感じました。

司会 最終的に北欧、スウェーデンのデザイナーを起用したということですが…

内山 海外のデザインといっても、そのテイストはさまざまです。たとえばイタリアですとフェラーリに代表されるような流麗なイメージ、色遣いも華やかです。ドイツはその対極にあるようなスタティックで落ち着いたデザイン。スウェーデンをはじめとする北欧デザインはシンプルなモダンさと温かさを兼ね備えています。先程お話した「人に優しい」というテーマを考えると、そうした中では北欧デザインが最もマッチするだろうという判断で選びました。印刷機械というとやはりドイツが占めるポジションは大きいですから、カチッと直線的なフォルムが主流なのですが、私たちはシンプルな中にも「情感」――プロダクトデザインの世界では「Form follow Emotion」というのですが――人間味豊かなフィーリングを織り込んでいます。

平田 給排紙ユニットに付いている「MITSUBISHI」のエンブレムをよく見ていただくとわかるんですが、縦方向に緩やかなR(アール:膨らみ)がついています。これがDIAMOND 300のデザインの象徴になっていまして、機械の至るところに同じ曲率のRを採用しています。ぱっと見では気付きにくい工夫ですが、機械にアクセスした時や機械のそばを横切った時、このRが効果的に圧迫感を解消してくれます。最初に内山さんが「B」のサンプルを持って来られて「このカーブが人に優しいんです」とおっしゃった時には「そんなことがあるか」と思いましたが、結果的には格段にソフトな印象になりましたね。

内山 「ソフト・ジオメトリック(柔らかな幾何形態)」(図3)という、私がプロダクトデザイナーとして長年追求してきた造形コンセプトがあるのですが、それをDIAMOND 300にぜひ取り入れたいという思いがありました。ずいぶんわがままを言わせてもらいましたから、設計の方々はさぞご苦労が多かったことだろうと思います。

平田 そういった部分ではコスト計算を担当した望月君が一番苦労したかも知れないね。

望月 コスト管理ではまだ苦労しているんで、終わったとは言えないんですけど…(笑)

平田 コストの追求に終わりはないよね。


図3:ソフトジオメトリック

マシンデザインに「光」を織り込む、世界初の挑戦。

司会 デザインでひときわ目を惹くのが「光る印刷ユニット」ですよね。私もIGAS2007の会場で初めて見た時には本当に驚きました。

内山 今回のデザインの目玉のひとつですね。「マルチファンクションビーム」(図4)と名付けているのですが、印刷ユニット部のデザインでは、メインパネルの素材や成型も含めて、世界でも初めてといえる技術的なトライアルを幾つもしています。まずメインパネルには、これまでのスチール加工では不可能だった曲面を描き出すために特殊な超塑性亜鉛合金を使用しています。この合金は加工性に優れているだけでなく、電磁波やノイズをカットしてくれる特性も持っていまして、人やコンピュータなどへの影響も少ないということで医療機器にも使われています。

司会 素材選びから「人への優しさ」というコンセプトを実践されたわけですね。

望月  一番最初に内山さんからデザインスケッチを見せていただいた時には、正直こんなのどうやって作るんだろうと思いました。板金では絶対に作れないフォルムでしたし、プレスで作るにしてもコストが大変なことになるだろうと…。デザインを描いてもらったのはいいけど、最終的にはだいぶカタチが変わってしまうんだろうなと思っていました。


図4:マルチファンクションビーム(LED)

内山 超塑性亜鉛合金との出会いがなければ、あのフォルムを実現することは難しかったかも知れませんね。素材が決め手になったということでは「マルチファンクションビーム」もそうでした。競合メーカーにはないインパクトのあるアクセントが欲しいということで皆さんと議論を重ねまして。離れた場所にいても「光」で運転状況を監視できる機能をプラスできないかというアイデアそのものはあまり苦しまずに出たのですが、そこからの試行錯誤が大変でした。LEDを光源にしてファイバーの中に光を通す仕組みを考えたのですが、通常のファイバーだと光が印刷ユニットの上から下までスーっと通らないんですね。いろいろとトライして手詰まりになりかけたところで、ある知り合いから、ちょっとしたヒントを貰って提案しました。(中に特殊金属を通したファイバーがあることを聞いたんです)。それでようやくうまく行きました。苦労もひと塩でしたから、これがカタチになった時は設計の皆さんと一緒にすごく感動したことを覚えています。

八木 IGAS2007ではベーシックな3色の発光パターンでデモを行いましたが、色の組み合わせや点滅間隔を調整して、もっと細かくカスタマイズすることもできます。

司会 業界初の画期的な機能をデザインとしても洗練されたカタチで織り込まれているのでとても感心しました。このマルチファンクションビームは、印刷機械に限らず、他の産業機械にも応用できそうな技術ですよね。

設計のフルCG化によって、開発をスピードアップ。

3次元CG

八木 あとは設計開発の手法の話になるのですが、DIAMOND 300は三菱の印刷機としては初めてですが、すべてを3次元CGで設計しました。従来は試作機を作ってからしかできなかった検証テストなどもコンピュータ上でシミュレートできるので、いろいろなアイデアを即座に試すことが可能になりました。組み立てのスタッフにも(コンピュータ画面を)見てもらって随時確認しながら作り込んでいけたのでかなりスピーディーに設計できたと思います。

司会 だから短期間でこれだけ大胆な技術的チャレンジをしながらモデルチェンジができたというわけなんですね。

平田 斬新な部分が多いので隠れてしまっていますが、今回は足場ひとつから“三菱らしくない”機械にしていこうとこだわりました。デザインについても単純に見た目のカッコ良さを追いかけるのではなく、オペレータの作業姿勢や動作、視認性を考えながら、フラットな方がいい部分、飛び出していた方がいい部分を見極めてディテールまで追い込んでいます。ボルトをできるだけ表面に出さないようにしたのも清掃のしやすさを考慮したためです。操作性やメンテナンス性を犠牲にしないデザインを徹底的に追求していきました。

司会 メンテナンスの発想から設計に取り組むというのも、これまではあまりなかったことですよね。

坂本 だから短期間でこれだけ大胆な技術的チャレンジをしながらモデルチェンジができたというわけなんですね。お客様(印刷会社)の仕事は本来「刷る」のがメインであるべきなのですが、清掃と点検、とくに清掃に取られる時間が非常に多かったんですね。DIAMOND 300は、掃除しやすくする、給油しやすくする、調整する箇所をできるだけ減らす、調整が必要な場合も必要な工具数をできるだけ減らすとか…そういうこだわりを持って全面的に見直しています。それによってダウンタイムがどれぐらい短くなるかの時間計測もシビアに行いました。

図5:エコドライブモーター

図6:ニップ調整容易化

望月 あとは外からは見えない部分ですが、ドライブモータ(図5)にも燃料消費の少ない省電力タイプを使用するなど、環境への配慮を随所に散りばめています。

八木 音声ガイドやニップ調整の頭出し機構(図6)などもここまでやるかというぐらい突き詰めていますし…

藤本 DIAMOND 300は本当に細かな部分まで開発スタッフ全員がこだわって作りあげた機械です。とにかく一人でも多くのお客様に使っていただいて、ご意見や感想をいろいろ伺えたらいいなと思っています。

司会 IGAS2007でデビューを果たして、次はdrupaが間近に控えています。「三菱の印刷機」の存在を新たにアピールする絶好の機会になることを私も楽しみにしています。今日は皆さんお忙しいところありがとうございました。

ページのトップへ戻る